チャームと戦った事が嘘のように、文化祭は活気を取り戻していく。


出店の呼び込み、お客さんの楽しむ声、全ての声があたしの聴覚を刺激する。


あたしは無意識にクロスのペンダントを首から外し、そして呪文を唱え、クロスを開放していた。




「クロス、聞こえる?」




杖に変化したクロスは、何も答えてはくれない。


そりゃそうか。クロスは夢の中でないと出会う事が出来ないのだから。




「何やってんだろあたし…。レンの事で動揺して、クロスを開放するなんて、ね…」




クロスもチャームとの戦いで疲れているはずだ。

少し、休ませてあげよう。



そう思い、ペンダントに戻す呪文を唱えようとした時だった。




「―――未来?」



「え…」




杖を持ったまま、あたしの身体は固まる。


クロスを開放した事で、これから渦巻く海のように、あたしの心が荒れて行く事になるとは、思ってもいなかった―――




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