繭が消えたと同時に、病室内に充満していた妖気も消えた。


「……次は……何がなくなるかな……」


増えた手形を見ながら杏が呟く。


手形は……すべて小さい子供のようだった。

まさか……全部繭が?

じゃあ……この数だけ、今まで現れてたのか?

余命を削るために……。

杏を引きずり込むために。


「……どうして黙ってた」


どうして話してくれなかった?

頼ってくれなかったんだ。

なんで一言だけでも……教えてくれなかった?



だけど。

気づかなかった俺が1番最低だ。



「言おうとしたよ。でも……」


でも?


黙って待つが、その先は……一切口にしない。



「……絶対に別れない。杏は俺のもんだ。……死なせてたまるか」


今日はもうやめようと思い、それだけを告げて病室を出た。