病室にいた全員が、杏を凝視する。


「杏樹何言ってるの?滝本君…ちゃんとここにいるじゃないっ!」

「え………?いるの?」


松沢が俺の腕を掴んで、杏の目の前に連れていった。

しかし……。


「…陸………どこ?」

全く…俺が見えていない。

「…杏……」

名前を呼んで…杏の手を握る。


「………っっ……いやぁあああああ!」

「え…」


握った手を悲鳴と同時に、思いっきり振りほどかれた。

その表情は…恐怖に怯えてて…。


そして、信じられない光景を目の当たりにする。




「………っ……かい……ちょ…」

「杏樹……落ち着け」


杏が、すぐ隣にいた会長に…甘えるように抱き着いた。

会長も、しっかりと抱きしめる。

まるで…会長と付き合っているような……そんな感じ。



俺の世界から…色が失われた。