そのことに、ようやく気づくのは



あたしと陸……お互いに




あらゆるモノを失ってからだった。




あの時…………。



一言でも、陸に伝えていたら。


一言でも、気持ちを言っていたら。



あの長い迷路に入ることもなく、泣くこともなかったのかな?


会長に、すがりつくように…甘えることもなかったのかな?


心安らぐ…安息の居場所を間違うこともなかったのかもしれない。



出会ってからの2年以上の時間が小さな思い込みを大きな誤解へと、引きずり込んで行く。



「杏樹」


名前を呼んでほしいと思う相手を、あたしは間違えてしまった。



もう一度…………


あの頃のように、2人で笑い合える日はくるのかな?