角を曲がったところで、ジェイソンは立ち止まった。
空を見上げ、ふぅと息をついた。

雲ひとつない空に、朝焼けが美しく広がっていく。

思いもしなかった。
また、朝日を見れるなんて。

警備員の言葉を思い出して、ジェイソンは苦笑した。
「おかげさまで、命拾いしました」

・・・命拾いしたのは、こっちのほうだ。

見た目も中身も、至って平均的な自分。
印象に残らないから、面接に行っても行っても、不採用の日々。
自分を必要としている人なんか一人もいないんじゃないかという恐れは、いつしか確信に変わっていった。
あの警備員が自分を見つけて助けを求めてきたとき。
自分はまさに、誰からも必要とされない人生に終止符を打つべく、最後の階段を上ろうとしていたところだったのだ。

あの警備員が、こんな自分に助けられたみたいに、
自分が、あの弱々しい警備員に助けられたみたいに。
自分を必要としてくれる場所が、どこかにきっとある。
大きなジグソーパズルのピースみたいに、いつかきっと、自分がピタリと当てはまる場所が見つかるはず。
今はそう思えた。

ジェイソンは、駅に向かう下り坂を、ぐんぐん降りていく。
眼下に広がる街並みに、本日最初の金色の朝日が反射して、キラリと輝いたのが見えた。


今日もいい天気になりそうだ。

生きてて、良かった。




【23日の金曜日・完】