本当、紫穂には恩を返せないほどお世話になってる。





「なによう〜改まっちゃって。親友なんだから当然でしょ。」


「ふふっ、ありがとう。」


「どういたしまして。じゃあ、先に行くから社長に報告してらっしゃいな。」


「うん、後でね。」





秘書課にあるフロアに着き、紫穂と別れて私は社長室に向かう。





扉の前で大きく深呼吸をしてノックした。





中から声が聞こえたのを確認して扉を開けると黒革張りの椅子に座り、書類に目を通す社長の姿。





「久しぶりね。」


「長い間ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。」


「迷惑なんて思ってないわよ。よかったわね、章菜も紗衣ちゃんも。」


「はい。」


「後、おめでとう。海堂社長に聞いたわよ。」


「ありがとうございます。」





社長の賛辞に思いの外恥ずかしくなり、照れてしまった。





立ち上がった社長に促され、来客用ソファーに向かい合って腰を下ろす。