「本日付で、管理課長としてここへ異動になった香取です。出版部門の立て直しに全力で挑みますので、ご協力をお願いします」


この挨拶を聞いて、『たかが課長の分際で偉そうに……』と、事情を知らない人は思うかもしれない。


でも、管理課は出版部門の独立課で、そこの課長と言えば、余所の部長や編集長と同等に肩を並べる立場なのだ。


しかも出版部門の運営に関しては、決定権こそないものの、上層部に対して最も強い発言力を持っているらしい。


そんな要職に、30歳にも満たない若い人が就く事が、如何に異例かは私でも分かる事だった。