ほんのりと薄紅色に染まった政宗の頬。

「…酒臭い」

近づいてきた政宗の顔をしかめっ面でそむけた。幸姫の行動に、政宗は声を上げて笑った。

「いいな、その反応」

にやりと笑う政宗。その表情に、幸姫はゾクッと背筋に寒気が走った。


な…なんなの、一体…


「一杯、どうだ?」

政宗に勧められたとき、幸姫はいつも玲子が言っていたことを思い出した。

「…お酒は二十歳になってから」


いつも飲みすぎたときに、母が呟いていた。年齢なんてとうの昔に二十歳を過ぎているっていうのに、三十路を過ぎてもそう言っていたのが可笑しくて笑えた。


ふるふると首を横に振ると、政宗は笑ってお猪口を手に持たせた。

「俺の酌だ。喜べ」

そう言って、笑って政宗はお猪口にお酒を注ぎ込んだ。

「お酒なんて飲んだ事ない」

少し困惑した表情でそう言って政宗の方を見ると、政宗の動きが一瞬止まった。どうかしたのかと、幸姫が首を傾げると、政宗ははっとした顔で、幸姫を見つめた。

「ものは試しだ。飲んでみろ」

にやっと笑って、政宗は幸姫の手に持っていたお猪口を、幸姫の口へと持っていく。
幸姫はごくりと唾を飲み込むと、ぎゅっと目をつむり、注がれていたお酒を一気に流し込んだ。