朽ちる人間の感覚に怯えながらもビキは、生きる覚悟があった。
他国の隠密の殺し屋として生きる方が、捕虜として薄暗い地下で生きるよりはマシな気がしたからだ。
そのためなら、なんだって覚えた。


身体に拘束帯を宛てがわれたビキは初めて牢以外の城内を歩かされた。
首輪に鎖を通され引き連れられる。

染み一つ無い絨毯の感触は地下牢を恋しくさせた。

今回、王の気まぐれで謁見を許される、城内の下働きにまで侮蔑の視線を浴びるビキの足取りは重い。

長いカーペットは階段まで伸び、その先の玉座に王は座っている。
王らしく着飾ってはいるが小さな身体に小肥りな腹は滑稽さは猿轡が無ければ笑いが漏れただろうとビキは脳内で悪態をついた。




「三番だな。お前の働きは功績に残す、お前は縞の國の英雄として王子の護衛に回そう。」

突然、捕虜から護衛への就任だった。


この、ご機嫌な王の通達は、臣下達を驚愕させた。