「りんごゼリー食べたい」


小さく呟かれた里穂の声に、買ってきてやるよと反応すると、うんんっと首を横に振られた。


「修斗のがいい」


「わかった、わかった。どっちにしろ買い物行かないと材料ないから、時間かかるぞ」


「うん」


大学に入り初めての夏休みを迎えた里穂は、例のごとく夏バテと夏風邪を一気に引き連れて実家に戻って来た。


里穂が寝込んで3日、相変わらず8度台の熱が続き、食欲がないのかほとんど物が食べられない状態が続いている。


そんな里穂を、俺は毎日練習が終わると見舞っていた。


寮から練習場までは、トレーニングを兼ねて自転車で通っている。


雨の日はしょうがないから先輩の車に乗せてもらってるけど、それ以外はほぼ自転車。


自転車というよりは、マウンテンバイクかな。


寮から里穂の家、自分の実家を通り越し、練習場まで行く。


帰りはその逆を辿ってくるので、寮に帰る前に里穂の家に寄っていた。


寮の門限は22時だし、それまでに帰ればなんの問題もない。


「暑い」