「新羅が…すごく大事で…失いたくなくて…言い訳にしかならないけど、ごめんなさい。」
不思議と涙が出なかった。
こんなときに限って…
「どうして…!!どうして、私にクマのストラップくれたんですか?本当は手放したくなかったんでしょ?」
新羅の言う通りだった。
本当はあのクマのストラップは、私の宝物にしたかった。
自分に嘘をついて、新羅にも嘘をついた。
私は自分をかばうような言葉すら出てこなかった。
誰が聞いても、私が間違っていた。
「ごめん!!新羅・・・私、先生よりも新羅が大事だったから!だから、新羅を応援したかった。…でも、なかなかすぐには気持ちが切り替えられなくて。」
何を言っても言い訳がましくて嫌だった。
新羅は何も言わなかった。
何もそれ以上聞かなかった。
長い沈黙の後に言った。
「私だって、優先輩の方が大事なのに… どうしてそれがわからないんですか?ちゃんと話して欲しかった。」
そのまま新羅は、大きな足音を立てながら走っていった。
私は
大事なことに気付いていなかった。
自分が新羅を思うように、新羅だって私を思ってくれていた。
だからこそ、ちゃんと話していたら何かが変わっていた。
新羅は
『私、諦めます!先輩の応援しますね』
そういう子だった。
過ぎてしまった時間は戻らない。
してしまったことも消すことはできない。
でも、もう一度私と新羅の間にあった絆を取り戻せるなら…
私は、今度こそちゃんと向き合うよ。