その日、部室には新羅の姿はなかった。


新羅が忘れて帰った下敷きだけが椅子の上で私を待っていた。




『優 LOVE 新羅』


油性のマジックで書かれた下敷きの文字。



いつもいつも私を一番好きでいてくれた新羅。


嬉しいことも悲しいことも、いつも私に話してくれた。





私は、言うべきだった。


正直に伝えるべきだった。




本気で新垣先生を好きなんだったら、なおさらちゃんと話すべきだった。



向き合うことから逃げた私に下されたのは、ふさわしい判決。




これで良かったんだ。


私は、目を覚ますことができた。





友情って何か。


信じるって何か。



信頼するってどういうことか。






相手から待っているだけじゃだめ。


自分も心の中を相手に見せないと、同じ場所には行けない。




相手に話を合わせて、適当にその場を過ごそうなんて考えは、甘すぎる。



それを知った友達は、私から離れていくだろう。


もっと、本音でぶつかってよ。

もっと心の中見せてよ…って、思うだろう。



新垣先生が言ってくれた言葉がある。


『自分に嘘付くな』



それは、とても大好きな言葉で、手帳に書き残してあった。



私は、好きな人からもらった言葉を、心の中に持ち続けることができなかった。




自分に嘘を付くな…


私は自分も誤魔化して、

新羅にも嘘ついて、何がしたかったんだろう。