まさか、犯人の手掛かりを探して消えたなどと言って、信じてもらえるとは思えない。

信じてもらえたとして、それ以上、なにを言えばいいのだろう。

きっと、怒られると思った。

なんて危ないことをしているんだと。

だけど、怒られたところで、奈美がひょっこり現れるわけではない。もし本当に犯人の手掛かりを探しに行き、そのまま……。だとしたら、素直に白状するだけ、馬鹿だと思った。

担任は、眉間にしわを寄せて睨んできていた。おそらくもう、担任には予想がついているのだろう。

琴美という親しい友人を亡くした自分達が、若気の至りで探偵を気取り、犯人探しをした。そして、ミイラ取りが、ミイラになった。

美幸は、俯くしかなかった。担任が諦めて、仕方なく「もういい、戻れ」と言ってくるのを、待つしかなかった。

じゃくり、かちん。じゃくり、かちん。

担任のデスクの上で、古びた懐中時計が、鈍い音を立てている。

(ああ、一時間目が始まるまで、あと四分と二秒……あ、もう四分ないや)

と思った矢先、授業開始のチャイムが鳴った。

「!」

まだ四分ほどあるはずなのに鳴ったチャイムが、美幸の顔を弾き上げさせた。眦に溜まってしまっていた涙が、ちかりとこぼれる。