「翔=女」


必然的に湧いてきた公式。

だからといって、翔が女というわけではない。

女をこよなく愛す、これがモットーなんだって。


翔と私は、以前同じバンド仲間だった。
私はそのグループのボーカル。
彼がギターだった。

音楽のために、生まれてきたと言っても過言ではない。
ギター以外にも、ピアノも弾けるし、ドラムだって叩けちゃう。
タンバリンだってプロ級なんだ。

そして、なんと言っても、彼から生まれるメロディーが武器。


ある日、小さなライブの打ち上げで、翔が私の耳元で囁いた。

「お前、俺についてこいよ」

煙草とアルコールの香りが漂う彼の息に、私の心臓は瞬間で破裂した。

「ど、どこに?」

正直、誘われてると思っちゃった。
普段から私は女扱いされたことがなかったし、びっくりしたんだ。
それくらい、どこか色気のある声だったから。

「俺はお前とバンドを抜ける。二人で、本気で、プロを目指そう」



私が断る理由なんてなかった。