「ゴメっ…あっ…たし……」



「ん?」



心配そうに顔を覗き込む由奈から逃げるように少しだけ顔を背けたあたしは、



「ゴメっ…ね。」



小さく呟きながらクルっと踵を返した。



こんなのヤダ。



ダメ。



もう…



ヤダ。



逃げたい。



「ちょっ…杏っ…」



「っ……ゴメっ…」



そして、カタカタと音を立てながらソーサーへと零れるコーヒーのことなんて気にすることなく、スタッフルームへと逃げようとした…



瞬間、



「オイ…待て。」



「えっ…」



「待て、ってんだよ。」



「っ!!」



そのいつもにも増して不機嫌そうな声に、あたしの心臓は止まっちゃうんじゃないかってぐらいドキンっと跳ねた。