「覚えていたんだね」
 白手袋をはめていない骨張った指は、モモの頬をかすめた。
 一瞬ふれた肌のぬくもり。
 驚いて手のひらで頬を押さえると、至って平然としたアレクシスは「ホコリだよ」と笑った。爽やかな騎士団長としての見慣れた微笑みだが、本音もそうではないことぐらい既に知っている。
 モモには分かった。
『ざんねん』
 と顔に書いてある。意地の悪い笑顔だ。
 やはり密室は気が抜けない。
「さて、少し話しすぎて喉が乾いたね。今度は君の番だよ、モモ」