結婚て、と瑠璃は遠慮がちに
言葉を紡ぐ。

「好きな人とするのが
いいと思うし…」

私もそう思います、と柊は頷く。
そうして胸ポケットから名刺を
取り出すと瑠璃に渡した。

「お嬢様を見かけたら
連絡をください。
慣れないので出るのは遅いですが
必ず出ますから」

携帯電話の番号の書かれた名刺を
見ながら瑠璃は小さく笑った。
わかりました、と返事をする。

「アナログな人間なので
機械には不慣れなんです」

柊のセリフに瑠璃はクスクスと
笑いを漏らす。

お願いしますね、と丁重に
頭を下げ柊は車に乗り込んだ。

去っていく黒塗りの車を
見つめる瑠璃を樋野は見ながら
「教室でいるのと雰囲気違うね」
と呟いた。

え?!と、驚きの言葉とともに
瑠璃の顔から笑顔が引っ込む。

「笑ってた方が可愛いのに」

瑠璃は言葉を失ってただ
目を丸くして樋野を振り仰ぐ。
耳まで赤くなる瑠璃を見て、
樋野は、あ…、と呟いた。

「ごめん、変なこと言って」

急に恥ずかしさが込み上げて
樋野は顔を背けた。

瑠璃の笑顔を見て純粋に
そう思っただけなのだが
思わぬ反応に樋野は自分の顔も
熱くなるのを感じた。