ケータイ小説 野いちご

(短編)フォンダンショコラ

フォンダンショコラは、過去に一度だけ、作ったことがある。

外側はしっかりとしたチョコレートのスポンジ、しかし真ん中から切ると、中からとろーりと溢れ出る熱々のチョコレートクリーム。


作るの難しいらしいよ、とよく聞かれるこのチョコレートスイーツに、何故挑戦しようとしたのか、理由はひとつだった。



4年前、あたしは大学受験に失敗して、浪人生というものをやっていた。浪人生は勉強がお友達、みたいなものだと思っていたから、あたしはきっとつまらない1年になるのだろう、と予想していた。

しかし現実は、その真逆だった。

今まで関わったことのないような人たちとの交流、新しく出来た友達、同じ目標に向かって突き進むライバル、
色んな人たちとの出会いがあって、あたしの浪人生活は、思いがけず華々しくなった。


そんな中で、あたしには彼氏が出来た。女子校育ちのあたしにとって、初めての彼氏。

恋愛の仕方なんて、よく知らなかったけれど、とにかく彼氏が出来てからは、毎日がもっと楽しくなった。


彼氏の名前は、隼人。あたしより一つ年上の、ちょっとイケメンで優しい男の人だった。


浪人生の身にありながら、夏には花火に行ったり、毎日メールしたり、電話したり、自習室で一緒に勉強したり、離れたくなくて、授業が終わった後も、一緒にファミレスで勉強したり、

とにかくすべてが、あたしにとって初めてで、キラキラと輝いていた。


受験も無事終わって、あたしが真っ先に考えたのは、もう過ぎてしまったバレンタインのことだった。



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