2月のアタマの日曜日。



あたし、坂下 杏奈は、バイト先であるカフェのレジカウンターに肘をつき、手のひらに顎を乗せると、



ガラッガラッの店内を店内を見渡しながら大きなため息をついた。



「17時っていえば、もっと混んでてもおかしくないはずなのに…ねぇ。」



「だよねぇ。」



「やっぱ、雪のせい…かな?」



「だろうねぇ…。」



「でも、もうちょっと…部活帰りの学生サンとか来てもよくない?」



「だね。」



そして箒片手にため息をつく親友の由奈を横目に、



正面のドアから覗く外の景色を見つめながら適当に返事したあたしは、



「……卒業…かぁ…。」



「えっ?」



「あと1ヶ月しか…制服……着れないんだよ…ねぇ。」



チラチラと粉雪の舞う中、



ふいに目の前のバスの停留所の前に現れた、黒いダッフルコートにマフラーを巻く女の子と、その横で寒そうに肩をすくめる男の子を見つめながら、再び大きなため息をついた。