大きめの窓を静かに開け
棗はまず抱えていたティアラを
地面に下ろした。
そして自分も窓枠を乗り越える。

木々が丸く形作られて
綺麗に刈られていた。

辺りを見回していると
ティアラが庭木の間を走り出す。

あ!と、思わず棗は声を上げた。

急いで棗はその後を追いかけた。
ティアラは小さい身体で器用に
木々の間を擦り抜けて行く。

あっという間にその姿は
見えなくなった。


棗は小声でティアラを呼ぶ。

辺りはシンとして
ティアラの声も物音もしない。
無我夢中で走ってきた棗は
ぐるりと周りを見た。

高いレンガ造りの塀の切れ目は
鬱蒼とした茂みで、
後ろは林になっている。

もう一度棗は少し大きめの声で
ティアラを呼んだ。
耳を澄ましながら気配を
探していると茂みの向こうに
見覚えのある色が見えた。

茂みを抜けるとそこには
ティアラを抱いた玲がいた。

「…ようやく来たな」

ニッと笑うと
玲は棗の手をとった。