「大丈夫よ!椎榎なら大丈夫!」

ママはあたしの肩をポンと叩き、パパと二人で仲良く荷物をまとめに部屋に入った。


「……なんでーーっっ!!」

あたしの声だけが、リビングに響き渡る。


この時生まれて初めて、明るくて楽観的な両親を怨んだものだ。


「……信じられんっ」

こーんな可愛い(いや可愛くはない)娘を一人日本に取り残すなーんてぇー!!


怒りを込めて階段をのぼって行く。


「あぁぁぁーーっ!」

両手で耳を押さえながら叫ぶ。


「近所迷惑よぉー!」

ママの声が一階から聞こえる。


知らんわそんなの!

どうせもう少しで居なくなるんだから、近所付き合いもくそもないわ!


「あーあ」

あたしは自分の部屋に入って、ベットに倒れて大きいため息をついた。


「…ひどっ」

パンフレットを見ながらあたしは一人つぶやいた。