十二月に入り、ようやく桜夜は落ち着きを取り戻した。

平助くん…忘れられないけど……これ以上皆に心配かけられないね。

総司が言ってた通り、私がこんなんじゃ、平助くんだって報われない。

「行ってきます」

まだ眠っている沖田に声をかけ、朝餉の支度に向かった。

土方の部屋の前に差し掛かる。

ひじぃにも迷惑かけた…。

部屋の前で小さくお辞儀をしてから再び歩き出した。

桜夜は今までと変わらず仕事をこなしていく。

一通り終わったかな?

桜夜が沖田の様子を見に戻ると沖田は体を起こしていた。

「どう?朝御飯は食べられた?」

「ええ」

沖田は笑いながら少しだけ残ったお膳を指差す。

「半分以上食べたんだね。よかった。…ごめんね、一人で食べるのって寂しいよね…」

「朝は忙しいのでしょう?気にしてませんよ ゴホ それより、もう平気な ゴホッ 様ですね」

沖田はそう言いながら布団の中で胡座をかいている自分の足をポンポンと手で叩き、桜夜に座れと合図をする。

「重いからダメだよ」

桜夜は沖田の脇に座った。

「ケホ 今日は此処に来て?」

少し首を傾げて自分の胡座を指す沖田。

何で?そんな言い方でそんな顔されちゃ…ズルイ。

「だって…」

躊躇する桜夜の腕を掴み、引き寄せる沖田。

「もうっ、強引なんだから」

背中からその腕にすっぽりとくるまれ、沖田の匂いに安心感を覚える桜夜。

心地好さに目を閉じる。

「誕生日おめでとう」

あ…平助くんのことでそれどころじゃなかったから…それで?

「私は生きてるでしょう?まだ生きてる ゴホ ゴホッ」

「うん。ありがとう」

来年は?……私一人?

不意に首筋に暖かい感触。

ビクンと体が跳ねる。

「そっ、総司?…んっ……病気っ」

「誕生日には私が ゴホッ 欲しいと言ったでしょう?」

「ちょっ…そう言う意味じゃないでしょ」

それでも桜夜を抱こうとする手の動きは止まらない。

「拒まないで…きっと…もう最後ですから……」

愛してるからって抱いて欲しいとは思わない。病気と戦ってまで生きていてくれる…それで十分だよ?

最後なんて言わないで…。

それでも桜夜には沖田の気持ちを拒めなかった。

二人は最後の肌の温もりを感じ合った。