店に入ると可愛らしい声が聞こえる。

「あら、永倉さん」

永倉は少し照れ気味に笑うと腰かけた。

へぇぇぇ~。あ~、そーゆー事っすか~。

でも、そこに女を連れてきちゃ、ダメなんじゃん?いいのかね~。

そう思いながらも桜夜は永倉と一緒に腰をかける。

「何にします?あら、今日は可愛らしいお嬢さんがご一緒なんですね」

女の子はニコリと笑った。

ほら、こうなるじゃん。誤解されてちゃダメじゃん、新八さん。

永倉は慌ててブンブン首を振る。

「こっ、こいつは決まった奴がいるんだ。そんなんじゃねぇよ。暇そうだったから連れてきてやったんだ」

新八さん、勝手に決めるなよ…。しかも誘ったのはそちらさんですよ?

その後も永倉は店の子と話しっぱなしで桜夜の事は目に入っていない様だった。

桜夜はそっと店の外に出て伸びをした。

はぁ~、うまくいきそうなんじゃん。ごちそーさまって感じ?

あーこのくそ寒い中、アツアツだね。

「桜夜じゃねぇか?」

ふいに呼ばれて驚く。

「栄太郎!?」

うわぁ、久しぶりだ。

「元気にしてたか?」

「うん。栄太郎は?」

「あぁ、この通りだ。桜夜は…団子か?」

団子か?って、私が丸められてる気分になるな。

「うん。お世話になってる人と一緒にね」

「世話?」

「あ~、うん。居候させてもらってんの」

まさか新撰組に居るなんて言えないけど。

「へぇ、よくしてもらってんのか?」

「もちろんだよ」

小舅と舅が目を光らせてるけどね~。

「そっか、辛くなったら俺がもらってやるよ。じゃあな、今日は時間ないから行くわ」

「ん、じゃあね」

栄太郎は走って消えていった。

もらってやるって…私、物じゃないし。そろそろ中に戻るかな。

再び店に入るとまだ二人は楽しそうに話していた。

邪魔しちゃ悪いなぁ。でも、一人で戻ったら小舅と舅に殺されそうだし…。

どうしたものかと店の中と外をウロウロしていると巡察中の原田が現れた。

「どうしたんだ、こんな所で」

「左之さんっ。いいところに来たっ。私を連れて帰って下さい」

訳を話すと原田は苦笑いをして「ご苦労だったな」と桜夜を連れて帰ってくれた。