「結局、僕の行動はほとんど裏目に出てたのかい…?」

「たぶん」

「なんてこった…」

木村は頭を抱えた。

「これに懲りてキャバクラ通いはやめることですね」

「当然さ!キャバクラなんか二度と行くもんか!」

木村は固く拳を握り締めた。

「でも月見くん『通い』って言い回しはやめてくれないか?昨夜は本当に誘われて行っただけなんだから」

そう訴える木村の顔を、達郎は冷ややかに見つめていた。

達郎は気付いていた。

木村が何か否定するたびに、その右の眉が上がることを。

それは眼帯からはみ出すほどだった。

恐らく木村は動揺したりウソをつくたびに右の眉が上がるのだろう。

彼の妻がそれ知っている可能性は大だ。

昨夜も会話の端々で眉は上がったに違いない。

木村自身はそのことに気付いてない。しかし、達郎はそれを教える気にならなかった。

もう少し痛い目を見た方がいい。

上がり放しの木村の眉を見ながら、達郎はそう思った。