『いったいどこでボロを出したんだろう…』

「あの、すみません」

「はっ、はい」

いきなり呼び掛けられた気がした木村は、驚いて顔をあげた。

「さっきから何度も呼んでいたんですが」

学生は木村の反応に対し、心外という顔をした。

「あ、すみません。えっと、何か?」

「再発行をお願いしていた学生証を受け取りに来たんですが」

「あ、はいはい」

木村は出来上がっていた学生証を取り出した。

「じゃ確認しますね。ええと、君の名前は…」

そこにあった名前を見た木村は、次の瞬間、思わず立ち上がった。

「月見くん!」

立ち上がった勢いそのままに、学生を指さす。

「なんですか?」

いつもと同じ黒スーツ姿の月見達郎は、木村の人差し指を見ながら、眉をひそめた。