「優先輩、先生の写真もらちゃったんです!!」


放課後、私に駆け寄ってきた新羅の手には、一枚の写真があった。



文化祭の準備中に撮ったであろう写真。


大きな看板に色を塗る新垣先生の姿。


きっと、『先生!』って呼ばれて、顔を上げた瞬間だと思う。


口開いちゃって、

かわいい顔をしてる。



のどから手が出るほど、欲しかった。


その写真…



新羅はその写真を大事に手帳の間に挟んだ。




きっと、彼女にはこんな顔いっぱい見せてるんだろうね。


教師じゃない顔。



私の持ってる写真は

全部、『教師、新垣和人』の顔してる。



部活の集合写真や

練習中の写真。



もしも、新羅に素直に『私も好き』って言ってたらどうなってたんだろう?



もしかしたら、


『先輩!写真もらいましたよ~、先輩にもあげますね!』


なんて言ってくれたかも知れない。




新羅は


そういう子だって…



知ってたのに…





いまさら


もう遅い。