「沢渡の走り、俺好きだな。」


ボーっとする私の背後から聞こえた声。


腕組みをして、他の生徒の走るのを見ながら…



「え…私ですかぁ??」


ドキドキと、新羅に申し訳ない気持ちで声が上ずった。



「沢渡は、笑顔で走ってるように見える。引退しても、こいつらのこと見に来てくれよ。」


新垣先生は、親指を立てて、その親指を新羅達の方へ向けた。



「はい… 卒業しても見に来ます。」


頭で考えていることと口から出ることが違う。


口から出てしまった言葉は、新垣先生を笑顔にさせた。



「おぉ!!それは頼もしいな。卒業してから来る生徒って案外少ないからぁ」


新垣先生はそう言いながら、少し微笑んで夕日を見つめた。


ニヤける先生の横顔を見つめた。





きっと、先生は今…


何かを思い出してる。




素敵な思い出を…




大好きな人を…






だめだ。


また


こんなこと考えてる。





キライになるなんてやっぱ無理。




新垣先生は、他の先生よりも…物凄く身近に感じるんだもん。



だから、それを恋だと錯覚してしまうんだ。





もう



この恋を捨てると決めたのに、





会ってしまうと



やっぱり



どんどん好きになる。




ごめんね



新羅。




私って最低だね…







嘘つきで、



いい子ぶって…




優しい先輩ぶってるけど…





最低だね。