カリカリとプリントにペンを走らせていく音だけがからっぽの教室に響いている。



そんなわたしの手元をぼんやりと向かいから見つめる優羽。



ふっと向けられた優羽の視線を無視して、ひたすらに手を動かしていく。



「光来……」


「なに?」


「機嫌悪い?」


「ちょっと」



だって、わたしと優羽が恋人で居られるのは後三日しかないのに……。



こんなところでプリントを解いてるだけなんて、そんなのただの幼なじみだって出来るもん……。



「だったら恋人同士しかしないことしていいの?」


「えっ……」



「キスしていい?」



さっきまで机の上にうなだれていた体を起こして、椅子から立ち上がった優羽の顔がゆっくりと近付いてくる。



幼なじみじゃなくて恋人同士でしか出来ないこと。



拗ねてたわたしが欲しがったモノは、優羽との恋人同士の証。



初めての経験に全身が心臓になったみたいにドキドキしてる。