『何よ…。これで満足…?』



タケルに気付いた杏奈は、屈辱に歪む顔で言った。



『…俺は別に、お前がこんな目に遭おうが遭うまいが知ったこっちゃない。』



『…ふん。
あんたは楓命だもんね。
でも。
あたしが楓を…』



『させない。』



『………………。』



『取引は公正にしないと、な?』



『………………。』



『俺はお前の無茶な条件に乗ったんだ。お前も約束は果たせ。楓には一切 近付くな、触れるな、傷付けるな。』



『ふ。』



杏奈は力なく笑った。



『あんたも堕ちたね。』



『…俺は堕ちてなんかいない。』



『だって。
ふふっ…まぁいいわ。
いずれ天罰が下るでしょうね。』



『…覚悟の上だ。』



『ホント、馬鹿みたい!
楓の為に全てを投げ出すなんて!あんたはあたしに体を売ったのよ!奴隷としてね!キャハハハ・・』



誰も居ない教室に、杏奈の甲高い笑い声だけが こだました。



そして、タケルは静かに呟いた。



『最後に堕ちるのはお前だ…。』