「…あなた、保健室にいた…」

棗の言葉に、そうです!と
瑠璃は顔を上げて笑顔を見せた。
メガネの下はくりっとした
大きな深いグリーンの瞳。
薄いピンクの頬が
健康的な雰囲気だ。

「……あの、わたしあなたと
お友達になりたいです!」

予想外の言葉に棗は驚いた。
この前とは違う色が見える。
不安もあるけど、憧れ、緊張、
希望…。

「…あなた、わたしのうわさ
聞いたことないの?」

棗は踵を返して歩き出す。

「うわさって…人の心を読む
とか言うやつですか?」

フラフラと歩く棗を
瑠璃は追ってきた。
子犬のように必死についてきて
棗に話しかける。

横目で見ると改めて
その小柄さが分かる。
それ本当だから、と言うと
すごいですね!と瑠璃は
無邪気な表情でニコッと笑った。

棗は言葉に詰まった。
鈍い頭痛がずっと続いている。
そんな棗に気づかず瑠璃は
話を続ける。

「隠し事ができないから
本音で話せますね」

棗は完全に言葉を失った。
言ってやりたいことはあるのに
言葉が出てこない。
目の前が霞んでいく気がした。

「…大丈夫ですか?」

歩みが止まった棗を
瑠璃が覗きこんだ。