バシッと鈍い音がする。



「って~…
まさか左手でくるとはね
すぐ手が出るのは母親似だな」


頬を押さえながら顔を上げると
棗の頬もバラ色に染まっていた。


「ハハ。そんな顔もするんだな。
この程度の血じゃ学校で
ジャマされた分には
全然足りないけど今日のところは
これで我慢してやるよ」



ニッと笑うと玲は棗の上を
飛び越え窓の外へと飛び出す。


「!」


棗は窓枠に手をつき
身を乗り出す。

周囲を見回したが
辺りには漆黒の闇と
静寂に包まれる
庭木があるだけだ。


玲の色も見えない。




冷たい夜風がほてった棗の頬を
やさしくなでた。