「突然降ってきて、勝手に喧嘩始めやがって!その女は誰だ」

土方は沖田と桜夜を正座させ、その前に立つ。

「桜夜です」

沖田は笑って答える。

「そうじゃねぇだろ!」

…私はどうしたらいいんだろう。

総司と一緒って事は江戸時代?

今度は私がタイムスリップ!?

そんな事を考えていると今度は沖田と土方が言い合いを始めていた。

静かに成り行きを見ていた近藤が二人を制した。

「二人とも、その位にしなさい。総司、座りなさい。トシもだ」

「はい」

沖田は素直に返事をし、土方は小さく舌打ちをして沖田の横に座った。

「さて、順を追って説明をしてくれないか?総司とそちらの…桜夜殿と言ったね?が、突然降ってきた。…しかし、天井に穴があいていない」

近藤が天井を指す。残りの三人も天井を見上げた。

ホントだ。タイムスリップってスゴイ。

ってか、あの時、総司が降ってきてたら私、どうしてたか…。

沖田はチラリと桜夜を見る。

―桜夜が私達の行く末を知っていると話してしまえば…桜夜の身は?―

「近藤さん、土方さん。包み隠さずお話します。…ですが、その前に少し桜夜と話をさせて下さい」

沖田は真剣な顔つきで近藤と土方に言う。

「口裏合わせじゃねぇだろうな」

土方がそう言うと沖田は土方を睨みつけ低い声をだす。

「誰に言ってるのです?此の場で結構です。隠す事ではありません」

桜夜の知っている沖田の顔ではない。その表情に桜夜は不安が押し寄せる。

沖田は桜夜に向き直り話し出した。

「桜夜。不可抗力とはいえ、貴女は過去に来てしまいました。この時代の恐ろしさは承知ですね?」

幕末…人斬りの時代…。

桜夜は頷くしかできなかった。

「そして貴女が過去を知る者と知れば、利用しようとする者、口封じを企てる者が現れるかもしれません」

それって私が殺されるってこと?

「こちらの二人はどちらでもない事を信じたいですが…」

沖田はチラリと土方を見た。

桜夜の体が恐怖で小刻みに震えだす。

「過去の者が未来に行く事と未来の者が過去に行く事…意味が違うのです」

沖田の言葉に益々事の重大さに気付く。