「とっても綺麗...。」


「この景色を何年も何百年も前の人も見ていたんだ。」


「そうね、ここはとても長い間人に愛されてきた場所だものね。」


「そうだ、同じ景色を書物の中でしか触れることの出来ない有名な人物が見たと思うとちょっとした感動だ。」


「石野さんって見た目と違ってロマンチストなんですね。」



からかうような紫衣の言葉に顔が熱くなった。



「父が歴史の好きな人だった。空想しながら生きているような...そんな父といつもここに来て話を聞かされたんだ。」



「石野さんのお父さんも歴史が好きだったんですか?」



「あぁ、俺の歴史好きも父親の影響だ。」



二人で湖を眺めているとバタバタとした足音とともに紫衣の友達の元気な声が響いた。



「紫衣---!!起きてたの?」




友達に駆けよる紫衣。



女の後ろからは嶋田の走る姿も見える。



結局嶋田も思うように進まなかったみたいだな。


嶋田を振り切って紫衣のところに帰ってくる女。


とてもお互いを大切にしているんだろう。






彼女のことも誤解していたようだ。




「清川さんだっけ?」



肩で息をしながら俺の隣に並んで、二人の後姿を見つめる嶋田に話しかけた。




「なかなか手強そうだな。」




クスクスと笑うと嶋田も負けじと言葉を返してきた。




「お前はどうなんだよ?」



「今回はお前に感謝する。最初で最後の俺からお前への感謝だ。」









-fin-