「なんか紫衣雰囲気変わったね。」


「そう?」


学校帰りによく寄り道したカフェ。


向かい合って座る私と紫衣。




「でも良かったの?真衣と石田の事。二人につき合いなよって紫衣が言った時私ビックリして何も言えなかったけど...。本当に本当に良かったの?」



「二人はお互い想い合ってるんだよ私の出る幕なんてないよ。だからもういいの。吹っ切らなきゃいけないよね。」



本当はそうじゃないって言いたかった。


だけど言うことはできないんだ。


それを言っていいのは一人だけ、石田だけなんだ。



紫衣のスッキリした表情を見ていると聞きたくなった。



「だけど悔しくないの?」



とても意地悪な質問。


ここで悔しいって、石田をまだ諦められないって紫衣が言ったら私は石田の気持ちを黙っていられなくなる。


お節介かな?



だけど....いいよね?


ちょっとだけ聞かせて欲しいの紫衣の心の中を。






「本当にもういいの!!また新しい恋探すんだ!!」


キッパリと言い切る紫衣に驚いた。


まるで人が変わったようだと感じたんだ。



「やっぱりなんか紫衣、変だよ?サバサバして紫衣じゃないみたい。階段から落っこちた時に頭打ってたけど原因はそれかな?」



重くならないように言った後声を立てて笑ったんだ。



「そうかもしれないね。全身を強く打ったのにどこも怪我しなかったんだよ。その代わりに心が別人になったのかもね。」



別人か...。


ホント冗談になってないよ。



ニッコリ笑いかける紫衣はいつもの愛らしい瞳を輝かせている。


ほんの少し心配で、だけど大好きに変わりはない。



これからもずっと一緒だよ。


紫衣、覚悟していてね!!




カフェの片隅で心に誓った私の気持ちは誰にも内緒。








-fin-