学校から帰ると
居間のテーブルに
3段重ねのランチボックスと
水筒が置かれてた




ただいまよりも
「なにこれ?」って思わず呟く



キッチンから蕾が出て来て


「おかえり、お兄ちゃん」


「蕾?これ……」


「ああ。今晩は
ピクニック行こうよ」


「………はい?」


「レジャーシート持って
晩ごはん外で食べよう」



夜にピクニック?
なんだ それ


「ピクニックしたいなら
明日、土曜日だし
昼に行こうよ」


ぼくの提案に
蕾はブゥと頬を膨らませ


「お弁当作ったのに
おにぎりもサンドイッチも
唐揚げもハンバーグも……」


「あー、わかった、わかった
ぜひ、行きましょう。蕾さん」





車で砂浜へ行き
車のヘッドライトの前に
レジャーシートを敷く



夜空には白い月が輝き


ザザ―――――――ン
ザザ―――――――ン

寄せてはかえす
波の音だけが聞こえた




蕾の作った
おにぎりを頬張りながら


「もうすぐ夏休みだね
どこか行こうか?」


そう訊ねると
蕾は首を横に振った


「どこにも行きたくない
蕾は今が一番いい」


蕾の答えは なんだか
一度どこかに行ったら、二度と帰って来られないみたいに聞こえて



「一泊くらい旅行したくない?」


もう一度 訊くと
蕾はやっぱり首を横に振り



「どこにも行きたくない……
蕾はここがいい………」



何かを憂える蕾の横顔を
ぼくは久しぶりに見た