ぼくは16歳 蕾は6歳



あの夏祭りの夜



ぼくは学校に好きな子がいて
その子と夏祭りに行く
約束をしてた



だんだん暗くなってきた夜



家を出ようと支度してたぼくに


「お兄ちゃん。蕾も行きたい」


普段は頼み事をして来ない蕾が
その日に限って言って来た



「今日は無理だ」


急いでたせいもあり
少し素っ気なく断り
ぼくは家を出た



家を出て少ししてから
蕾が後をついて来た事に気付く



ぼくが振り返ると
蕾はビクッとして
唇噛みしめてうつむいた



「………蕾も行きたい」



鬱陶しく思ったんだ、蕾を。



「今日は無理だって言ったろ?
帰りな」



冷たく言い放ち
小さな蕾を道に残して
ぼくは彼女の元へと行き
初デートを楽しんだ



その間、蕾は家に帰らず
公園で襲われたのだ


これが ぼくの犯した
最大の過ちで罪だ




もしも、あの時
ぼくが蕾を連れて行ったら


もしも、あの時
ちゃんと蕾を家に送ってたら



取り返しのつかない
『もしも』ばかりを考えた




もう蕾が誰かに傷つけられるのは嫌だし、残された傷を知ってるのは ぼくだけだ



光も救いも必要ない


もう何もいらない