そして旅行の朝―

「二人とも、気を付けて行ってね」

美沙子が仕事に行く準備をしながら声をかける。

「「はい」」

「それと総司くん―京都で無茶、しないでね」

美沙子は無理矢理過去を探るな―と言いたいのであろう…それから、もう一つの意味も込めて。

「解っていますよ。どちらの意味も」

沖田は笑顔で答えた。

お母さん…総司…だったらやめとこうよ。

家で二人とかじゃないんだしさ…緊張とかハンパないから。

桜夜の何か言いた気な顔を見たものの、美沙子はそのまま仕事に出てしまった。

そんな桜夜の頭に沖田がポンと手を置き

「大丈夫ですよ。折角なのだから楽しみましょう」

と言い、荷物を取りに行った。

そう…だよね?うん、そうだ。楽しもう!

総司とはいつまで一緒に居られるか分からないから…。

桜夜も部屋に荷物を取りに行き、再びリビングに戻ると、旅行鞄と竹刀を持つ沖田が待っていた。

「そぉじくん…竹刀、いらない…」

「何故です?体が鈍りますから必要です」

稽古バカ!

「おかしいから、絶対ダメ」

「意地悪ですね、桜夜は」

「そうだね。とにかく、竹刀は置いてって」

適当にあしらい、沖田の手から竹刀を取ると、リビングの端に置いた。

「じゃ、いこっ。忘れ物はない?」

「桜夜の方こそ忘れ物はないですか?」

もぉ。総司はいっつも子供扱いするんだから。

「ほら、そんな顔をするから子供扱いされるんですよ」

見透かした様に言われ、桜夜は赤くなってしまった。

「ハイハイ、いいですよっ。あ、ホントにもう出ないと遅れるよ」

沖田と一緒にリビングを出る。

「「いってきます」」

二泊三日の京都旅行の幕が開けた。