その私の目の前にその男はあぐらをかいて座った。

「僕はね、君なんだ。君の心の中なんて全てお見通しだ。嘘ついても誤魔化しても通用しないよ?ここにきたのは自分探しだろ?可能性を捨てきれないんだよな?結論から言うと・・、君死ぬよ。」

その僕は、的確だった。
地に足を着けないで生きてばかりいたら死ぬといっているのだ。

私は開き直りようやく声をだすことができた。

「ねえ、あなたは私のどの部分なの?」

「どの?」

「ああ。私のどの欲望かを聞きたい」

「ふむ。じゃあ、聞くが・・・、君は自分がどんな欲望をもっているか説明できるかい?それが出来れば僕はその瞬間消えることになる。そして帰り道にはコウモリを見る事はないよ。生きることが出来る。すなわち、君は自分を見つけ人生を謳歌することができるのさ。」

私は声は出るようになったが、完全にもう一人の自分に飲み込まれ声を出せずにいた。

「時間はいくらでもある。君は今まで本気で考えた事などなかったんじゃないかな?考えているようでも回りに流されたり、妥協したり・・可能性を捨てて逃げたり。まあ、過去なんていいよ、さあ、考えてごらんよ。結果がでなきゃどの道帰れないんだからね。コウモリは腹を空かして待ってるんだ。<帰りの人間はう~ま~いぞ>ってね」

その自分は口元で笑い、目で私を馬鹿にしていた。

私はその自分を見て思う。
この男の口元から察すると、答えはないのではないか?
だから笑っているのか?
それとも、<答えを出せ>と思っているのか?
真剣な眼差しはそのためなのか?

「ねえ、君。僕のことなんていいから早く考えなよ。」

その男には全て読まれていた。

私は戦うまえから戦意をなくしてしまったかのように肩を落とした。

それは、その男の言う事が間違いではないことも分かっていたからだ。
どの道、助からないのであれば考えるしかない。
普段なら何とかして自分に害がないように逃げる術を考えるであろう。

そう思った途端に
周りの木々にはまたもやコウモリ達が顔をだしていた。

私は開き直ざるを得なかったのだ。