その時、目の前には円形の芝が広がっていた。
その場所には光が降り注ぎ幻想的な場所に見えた。

さほど大きくもないその場所の中心には一人の人らしきものが背を向けて地べたに座っている。
それ以外には何もない場所であった。

私はそーっと近づく・・。

「あ、あの・・」

私はどう声をかけたらいいか分からずに、戸惑いながらそれでも、その人間らしきものの前へ回り込んだ。

私はその人間の顔を見たとき・・、はっきりと声を失った。

<私だ>

そう紛れもなく私だったのだ。

姿、形・・、鏡をみているかのようで不思議な気分だった。
何がどうなっているのかさっぱりわからずに、呆然とした。

もう一人の自分は閉じていた目をあけ、立ち上がった。
私との距離は2メートルほどだった。

今、私は夢をみているのだろうか?

そんなことを考えているとき・・、
自分に声をかけられた。

「やあ」

驚くほどに気さくな自分だった。

私はそれでも反応できずにいた。

すると、
「そりゃ驚くよね。自分がいたんだもんね。僕もそうだった。君に分かりやすいように説明するよ」

その自分は、要領よく話し始めた。

「僕はね、君なんだ。これは間違いない事実。これを踏まええて聞いてね」

私はかろうじて頷いた。

「君は昔の僕と一緒で、夢をみているだろう?こんなの自分じゃないって。私の人生は他にもあるってね?違うかい?」

私は今度は頷けなかった。

「認めたくないんだね?それもわかるよ。じゃあ、入り口からずっといた、コウモリらしきものは見たかい?そりゃ見たよね。でもさ、あれはね、自分を一人しかもっていない人には見えないんだ。君みたいに、この自分も違う、あの自分も違うといつまでたっても現実を直視しない人が、その夢の数だけコウモリの数を見る。」

そういうとその自分は私に近づき私の顔の下から覗きこむようにじっと見た。
私は足が動かず、あとづさりすることも出来ずにその場に尻餅をついた。