「顔をあげるんじゃない、下衆」

「すみません……すみません……」

「行動で示して、って言ったわ」

「……」

「足、舐めてちょうだい」

私は、あくまで優雅に、ソファーへ腰かけた。そこは、普段なら夫が座る、テレビが一番見やすい位置。

ロングのフレアスカートから伸びている足を組んで、彼の眼前へ出す。ストッキングは、彼が来る前に脱いでおいた。

「舐めなさい」

と命令しながら、足の甲で彼の頬を叩く。

目をつぶって小刻みに震えるばかりの彼が、少し、腹立たしく思えた。

私にこれを要求したのはだれだったか、忘れたとでも?

動かない彼の鼻っ面を、蹴っ飛ばす。彼はおもしろいほど無様に後ろへ倒れた。

「なにしてるの。聞こえなかった? その耳、切り落とすわよ。舐めなさい、這いつくばったまま、指の一本一本、ていねいに」

「は、はい……」

よろよろした動作は、衰弱した野良犬のようだ。起き上がった彼は、恐怖からか、私の目を見ようともしない。

ペロリと、彼が舌を出した。親指の先をためらいながら舐め始める。