「綺麗だよ」

とおじさんは言ってくれた。言って、私の肩に手を置き、そのまま押し倒す。

「君は綺麗だよ。大人のように汚れてない。白くて、純粋で……まるで、初雪のようだ」

「……じゃあ、そのうち汚くなるね。アスファルトに落ちて、人に踏まれて、泥臭くなるね」

「……させないよ」

おじさんが、私の上に覆い被さった。膝が、私の股の間と脇のところに突いている。両肘は私の顔の横で、おじさんは私の頭を抱え込んでいる。だからその声はとても耳に、近いところから。

「君……いくつになった?」

「……十五」

嘘だ。ひとつサバを読んだ。すでに十六だ。

おじさんのためか、自分のために。たぶん、十七になっても十八になっても、十五と答えるんだろう。

「時間がないね」

「雪が、地上に落ちるまでの?」

タバコのにおいがする。脳みそが湯がかれていく。大人の、男の、臭いが、私に、染みつく。

視界がぐらぐらした。

このにおいが、私を苦わせる。

におい。言葉。そしてキス。

この三拍子が、くるくる狂々苦々と、私を夢の薬漬けにしてしまう。