ポケットの中身は 使えもしない亡くなった国のコインが数枚か。
はたまた割れたビスケット。


僕が剥き出しの夢を押し込んだはずの もう一方のポケットには知らぬ間に穴が空いて 使いもんにもなりゃしない。



隣の席の見知らぬ誰かは

『12の時の貴方に“好きだ”って素直に云えば良かったんだわ。 24になったアタシが今になってもそれを云えないのは、きっとそのせいだから』

と呟いた。


そう云った君が“素直で嬉しかった”なんて今更 僕も云えやしないよ。