身体を預けている広い胸の心音と、歩を進める度に感じる微かな振動。



独りで向かっていた場所へ誘われているとは、どこか信じられなくて。




嬉しさで泣き止めナイ私は抱っこされたまま、シャワールームへと到着する…。





「ゆっくりして来いよ」


「っ、ありがとう…」


耳元で囁かれれば、清涼な声色に鳥肌が立つほど反応してしまった。




先ほどの乱暴な抱き方とはチガウ、壊れ物を扱うように下ろされて。



どこか名残惜しく思うのは、私の成分が拓海で出来ているから…。




ドキドキと高ぶる鼓動が、身体に残る気だるい余韻を強めたせいで。



地面に足がついた途端、不覚にもフラリとよろめいてしまった。




グイッ――

そんな私の腕をすかさず引っ張ると、体勢を整えてくれる。




「辛いなら手伝うけど…?」


「っ…、だ、大丈夫!」


弱点を攻め立てるように囁く拓海に、恥ずかしさでまた視線を外せば。




「冗談だよ、それこそ我慢出来なくなる…」


「ッ――!」


フッと妖しく一笑して、シャワールームを退出されてしまう。