トラッドは最も近くでハロルドの言葉を聞いてきた者だからだ。ハロルドほどではないものの、強い尊敬の念を集めている。

 とはいえ、彼の言動はお調子者のそれであり、呆れられる事も多々あった。

「あれ? 声、聞こえなかった?」

 彼に心を開いて貰うために、雑談をしていたんだよ。

「飴と(むち)は大事だからね」

「そうか」

 息子の言葉に納得し、連れだってベリルのいる部屋に向かう。