今にして思えば、私と初めて対面したときのハロルドのあの表情は、驚きだけではなかったのか。
専門家たちのほとんどは、私を見ると驚きに満ちた顔をした。類に漏れず、ハロルドもそうだと思い込んでいた。
言語の授業だけでなく、持論を展開するハロルドに多少の煩わしさは感じていたものの、私にとっては刺激のある内容ではあった。
だからといって、それに賛同するまでには至らない。
ハロルドの言っている事の全てを否定はしない。けれど、それを実現しなければならない事だとは思わない。
「ハロルド」
顔をしかめて小さくつぶやく。
あの襲撃が奴の仕業だったとは考えもしなかった。殺し損ねた代償とでも言うのか。政府の対応が浅はかだったとしか言い様がない。殺すことなく、穏便な処置は出来なかったのか。