ハロルドは当時、「世界をまとめ、一人の支配者が全てを統治することが唯一、人類存続につながる」──そんな馬鹿げた妄想を私に熱弁した。
二歳頃から始まった語りだが、そのときハロルドは私が理解して聞いているとまでは考えていなかっただろう。
彼は幼少に刷り込みを行う事で、私を世界統一の信奉者に仕立て上げる計画を立てた。
「安心したまへ。君が人工生命体であることは、ここにいる者しか知らないことだ」
ベリルはそれに、さしたる反応を示すことはなく。ハロルドはベリルが虚勢を張っているとみていた。
「わたしが何故それを知っているのか。気になるか」
それにも答えないベリルを鼻先であしらい、話を続ける。
「息を吹き返したわたしがまずしたことは、君に関する調査だ」
あれは、天才少年に対する研究施設というには、あまりにも不自然だった。
そこでわたしは優秀なハッカーを雇い、アルカヴァリュシア・ルセタ政府のコンピュータをハッキングして君に関する情報を全て吸い出した。