高ヒールのパンプスで歩くのも、さすがに疲れてしまって。



吸い込まれるように、目についた一軒のカフェへと入店した。




アイスコーヒーを注文すると、そのまま席について少し口をつけた。



アレンジコーヒー以外では、コーヒーは必ずブラックで飲んでいるけれど。



芳ばしい香りとほろ苦くて抑揚のナイ味に、悲しさを覚えたの。




この味に慣れてしまった私は…、オトナぶっているだけだから・・・





“お袋は蘭の辛さを汲んで、敢えて俺の秘書に置かせたんだ”



頬にリップ音を立てて、優しいキスを落とした拓海の言葉が蘇る。





奥様の計り知れない優しさが、私たちを結んでくれたというのに。




色々ありすぎた出来事は、弱い私を鍛えてくれた筈だというのに。




諦めていた未来が開けて、愛しい貴方と一緒になれるというのに。




どうして私はこんなにも、すぐに砕けそうになるの…?





貴方への愛証だけが増しても、煮え切らない想いが情けないよ・・・