──老人はトラッドの到着を今か今かと待ちわびていた。この数時間が何日にも思えて苛立ちを隠せない。

「到着しました」

「おお、おお……」

 女性の声に体を震わせ、眼前の扉を凝視して固唾(かたず)を呑む。

「父さん。ただいま」

 扉が開かれ、青年が笑顔を見せた。

「トラッド。彼がそうなのか! ああ、確かにそうだ。面影がある」

 青年に抱き上げられている眠ったままのベリルに歓喜の声を上げ、手を振るわせる。

「そ、その中に」

 老人は興奮気味に透明の円柱形をしたスペースに促した。それはまるで、水族館の水槽のように分厚く、頑丈さを持つ造りになっている。

 トラッドは、透明の開かれた扉からベリルを静かに床に降ろした。