「あー美凪の手料理食べるの久しぶりだよなぁ…
アイツ…料理はしないからな」
「そう…なんだ…」
悪口であっても、勇樹の口から元妻のことを聞かされるのは嫌だった。
そんな気も知らずに、勇樹は“美味しい”を連発した。
内心悪い気はしなかった。
千早人は食に煩く、まずいと言うことはなかったけれども
残したり、○○を入れても美味しいんだよとか
ご飯が固い、今日の味噌汁濃いね、とか…
何でも美味しいとペロリとたいらげ、満足そうに笑う勇樹を見て
こんな朝がいつもだったらいいな…
と私はつくづく思った。
「洗い物は俺がやるよ」
「いいよ〜」
「美凪、足痛いだろ?
いいから座ってろよ」
私は食後のコーヒーを飲みながら、勇樹の背中をニヤニヤして見ていた。
こんな日が二度と来ないことも知らずに……。
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