この社長室…、いや・・・




俺の傍を離れた時こそが、最も蘭を苦しめる――



そう解っていながら、仕事に感けて引き止める事が出来なかった。





「まぁ、多分大丈夫だろうけど・・・

今から秘書課行って、蘭ちゃん連れてソッチ行くわ」


「あぁ、頼む・・・」


そんな祐史に感謝をしつつ、手早く通話終了ボタンを押した。




“大丈夫だろうけど…”


遠まわしに気遣った祐史の言葉にも、募る不安が拭い去れない。




本当は追い掛けたかったが、昨日の分の仕事に阻まれて叶わなかった。




蘭を待たせる時間を、少しでも減らそうとしていたが為に・・・



だからこそ、ようやく身軽となれた“今”は心配で仕方ない。





何となく胸騒ぎというか…、イヤな予感が立ち込めていく・・・






バンッ――

すると突然、社長室の重厚な扉が一気に開け放たれる。





「蘭ちゃんが、いなくなった!」


息を切らした祐史が齎したのは、予感を的中させるモノだった・・・